Special to me
浮気・・・と言うよりも、寧ろ私が浮気相手。

後から出てきた彼女だって、取られたという悔しさがない。
だって、彼のこと、そんなに好きじゃない。

"彼氏がいる"という状況に憧れていただけ。

『俺はいつか、駅を通過する時に彼氏の1人でも連れてくるのではないかと思って、気が気じゃなかった』
「1回も、そんなことなかったですよね」
『少なくとも駅では目撃しなかったよ』

そりゃそうでしょう。

彼氏と改札を通るなんてこと、そもそもやったことがないんだから。

米原さんはひと口カフェオレを飲むと、背筋を正した。

『俺はずっと真子ちゃんを見てきた。だから今度は、真子ちゃんに俺を見て欲しくて、さっきシフト表を渡したんだ』

実は、もう見ているよ、なんてことは言えない。

だって米原さんはパン屋の彼女で失敗しているんだもん。

私が勘違いしちゃ、いや、勘違いしていると米原さんに思わせちゃいけないんだ。

『ごめん。無理強いはしない。けど、この紙は真子ちゃんにあげるから、あとはどうするか、真子ちゃんが決めて構わないから』

"そろそろ帰ろうかな。コーヒーショップにしては、長居だよね"と席を立った米原さん。
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