ウェディングドレスと6月の雨
 足音と息遣いで振り返る。穂積さんが戻ってきた。濡れたスニーカーは砂だらけ。車には予備のスニーカーがあって、取り替えてきたのかと思ったけどそうじゃなかった。手には……紙袋。白いワンピースが入ってる、あの紙袋。


「それ」
「ああ」
「どうしたんですか?」


 穂積さんは私に紙袋を持たせると、中からワンピースを取り出した。


「処分する」
「処分って?」
「この海に戻す」


 穂積さんはワンピースを持ったまま、海の中へと入っていく。スニーカーについた砂を落とすかのように、ジャブジャブと音を立てて。そして膝まで入った辺りで立ち止まった。まさかこのまま入水とは思わなかったけど、私も海の中に入って穂積さんを追い掛けた。どうせもう、ブーツの中は濡れているし。

 ジャブジャブという音に気付いたのか、穂積さんは振り返ると少し驚いた顔をして。でも、すぐにクスクスと笑った。


「大丈夫か?」
「どうせもう、濡れてたし」
「冷たいだろ」
「それも気持ちいい」


 穂積さんは手元のワンピースを見つめる。白いサテン地は太陽の光を浴びてキラキラと輝き、チュールの部分は風でひらひらと踊る。


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