ウェディングドレスと6月の雨
 車は来た道を戻り、県道を走る。そのファミリー向けショップに着いて開店するのを待つ。


「大丈夫か?」
「はい。あと10分ですよね」
「温かいモンでも飲むか」


 穂積さんの視線の先には自販機。コーヒー、紅茶、コーンスープ、ココア。


「はい。じゃあ買ってきます」


 私は外に出ようとドアに手をかけた。そしたら右腕を掴まれて。


「俺が買ってくる」
「でも」
「外に出たら寒いだろ」
「それは穂積さんも」
「俺はいいから」


 穂積さんは掴んだ腕を離して運転席を降りた。そして店舗の壁に寄せられた自販機に行くと小銭を入れる。何かのボタン押して取り出し口から缶を取り上げると再び小銭を入れる。そんな普段のありふれた姿ですら、見るのが恥ずかしくて俯いた。

 コンコン。助手席の窓がノックされた。窓の向こうには穂積さんと缶。ココアとコーンスープ、二つの缶を片手で持っていた。どちらかを選べ、という話だと思った。窓を開ける。


「穂積さんは?」
「俺はコーヒー。ほら、熱いから早く取れよ」
「はい……」


 私は二つの缶を受け取ると膝の上に乗せた。穂積さんは運転席に戻る。
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