ウェディングドレスと6月の雨
私は首を横に振った。
「ならいい。それともボートの筋肉痛が今頃になって出たか?」
「え?」
「年に比例するんだろ、筋肉痛が出る時間」
穂積さんはクスクス笑う。からかわれて私は少しムッとした。
「それは穂積さんでしょう?」
「俺は平気」
「じゃあこれから出るんですよ」
笑っていた穂積さんは真顔になる。何か気に障ることを行ってしまったかと不安になる。
「昼。メシ食いに行かないか」
「え……」
「昼飯」
ランチのお誘い。突然舞い込んだデートにふうっと体が浮き上がる感触を覚えた。
「はい。あ、でも……」
「でも?」
私は手元の鞄を見た。革の鞄と一緒に持ってるミニトート。
「お弁当作って来ちゃって」
「なんだ。そんな事か」
「そんな事って」
「いや。なら、車を出すから公園で食べないか? 俺はホカ弁買ってくから」
「そうですね」
じゃあ昼に、と言って穂積さんはエレベーターの前に行く。一度振り返った穂積さんに軽くお辞儀をして階段に向かった。