ウェディングドレスと6月の雨
「メール、苦手なのか?」
「え?」
「……いや、何でもない」


 私はお肉を挟んだまま、運転席の穂積さんを見つめた。ほんの少し顔が赤い。


「あの、穂積さん?」
「何でもない」
「メールがどうかしたんですか?」
「……」


 穂積さんはさらに顔を赤くして生姜焼き弁当を食べている。


「顔、赤いですけど、むせました?」
「だから……」
「言ってくれないと分からないですよ」
「……素っ気ないから、成瀬のメール」
「え?」
「返信するかしないか、いつも迷う」


 穂積さんの方が苦手だと思ってたメール。実は私を気遣ってメールをくれなかったってこと……?


「じゃあ次からはハートマーク入りのメールにしますね」
「……」


 ちょっとからかったつもりが、穂積さんは恥ずかしくなったのか、黙って返事もしなかった。2人出黙々と食べる。沈黙も穂積さんとなら気にならない。逆にこんな空気感がいい。どきどきしてソワソワして緊張もしてるのに、心地いい……。


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