ウェディングドレスと6月の雨
「クリスマス……」


 穂積さんが呟いた。やっぱり、と思って顔が綻ぶ。


「クリスマスですか?」
「いや、クリスマスと言うよりは……」


 穂積さんが何かを言いかけたところでメインの料理が届いて、穂積さんは黙り込んでしまった。クリスマスと言うよりは、って、クリスマスの話じゃないんだろうか。

 各テーブルには卓上のツリーや雪だるま、ソリに乗ったサンタの置物などが飾られている。私たちのテーブルにはリースがちょこんと壁にもたれるように置かれてあった。穂積さんは黙々とランチを食べる。フォークでガツガツとご飯をすくって口に運ぶ。あまりに喋らない穂積さんに、私は嫌な予感さえした。別れよう、とか。

 私は意を決して、話し掛けた。


「穂積さん」
「何だ」
「あの、言いたいことがあるなら一気に言ってください。どんなお話しでも私は受け止めますから」


 なんて格好つけたけど、私はいっぱいだった。右手でナイフを握りしめ、左手でフォークを握りしめ、お皿の上の真鯛のオリーブオイル焼きを見つめた。

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