ウェディングドレスと6月の雨
「……いいのか」
「はい。覚悟はしてます」
「そうか……」


 そんな冷静な台詞を吐きながらも私は内心、不安だった。穂積さんの言葉を待つけれど穂積さんは相変わらず喋らなくて、私は見つめていた真鯛のお腹にフォークを突き刺した。そしてナイフでザクリと切り分けた。


「年末、どうするんだ」
「年末……? 実家に帰省しますけど」
「いつから」
「27日が仕事納めなので、30日の夕方に新幹線の指定席を押さえてあるんです。あの……?」


 ガツガツ食べていた穂積さんはフォークとナイフを皿に置いた。


「なあ」


 穂積さんは顔を上げて私を見つめる。


「何でしょうか……」


 何を言われるのか見当もつかなくて、ただ、穂積さんが喋るのを待つしかなくて。


「どっちがいい?」
「何をですか」
「俺の部屋と……スイート」


 “俺の部屋”と“スイート”……??


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