ウェディングドレスと6月の雨
 ……スイート。ケーキのこととか。でも穂積さんの部屋とケーキを天秤に掛ける意味が分からない。

 キョトンとする私を穂積さんは見つめる。



「たから……“初めてのお泊まり”だ」
「初めての、お泊まり……?」


 お泊まり……お泊まり……。スイートってホテルのスイートルートのこと??

 私は一気に赤面した。唐突に聞かれて戸惑う。もちろん、大人だし、いつかは……って想像はしていたけれど、面と向かって聞かれても。

 しかも。


「お泊まりって……ぷっ!」


 私は吹き出した。だって大の大人が、無愛想な穂積さんが、“お泊まり”なんて可愛い言葉を言ったものだから。つい笑ってしまった。


「笑うなよ。成瀬だって覚悟は出来てんだろ?」
「や、それは」
「覚えてろよ、笑ったこと」
「だから、違……」


「で、どっちがいいんだ」
「スイートも泊まってみたいんですけど、年末年始だと高そうだし、ゆっくりするなら穂積さんちの方が……」
「ふうん。ゆっくり?」
「や、その、ゆっくりって言うのはですね!」

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