ウェディングドレスと6月の雨
……翌週。
暦はどんどんと過ぎていく。1週間はあっと言う間だ。空梅雨と思われた今年の梅雨もようやく雨続きになった。会議室の中は蛍光灯が煌々と照らしているけど、どことなく暗い気がする。降り出してはいないけど窓の外はどんよりして今にも泣きそうだ。
「穂積くんは……またか」
営業部長のいつもの台詞。そして皆が息を吐く。広報室の高田さんは小さく舌打ちした。苛ついてるのは面識の少ない私にも見て取れた。そして彼は右手を挙げた。辺りがざわついた。
「営業部長」
「何だね、高田くん」
「穂積のことです。プレゼン担当の本人がいないのでは何のための会議か分かりません。こうも欠席が続くと当日も怪しいと思われます」
「まあ……そうだが」
「代役……つまりはプレゼン担当を変えてはいかがでしょうか。僕が立候補します」
どよめき、というと大袈裟だけれど、室内にいる社員が隣同士で話をする。
「高田くん、気持ちはよく分かるのだが、これは本社の意向なのだよ。今回のA社プレゼンは穂積くんにとのことでね。私の一存では決めかねる」
「ですが、このままでは……あ」
カチャリ。ドアノブの音。話していた高田さんも喋り始めた社員達も一斉に口を閉じた。シンとする室内。皆の顔は会議室後方のドアに向く。
「遅くなりました」
「穂積、お前」
「顧客先でうちの機器のトラブルを見てました」
穂積さんは私から資料を片手で奪うように持つと、前方の席に歩いていき、ドスンと椅子に腰掛ける。そのふてぶてしい様に申し訳ないと萎縮してるようには感じられなかった。さっきの高田さんと部長の発言を聞いてたとは思うけど、何をしても降ろされないという自信からだろうか……。