ウェディングドレスと6月の雨


「神辺さんもここに来たでしょう?」
「ああ」


 穂積さんも人参と皮むき器をまな板の上に置いた。そして髪をかきあげる。


「ホットケーキ焼いたの?」
「ああ」
「一緒に食べた?」
「ああ」


 こんなことを聞いてどうするんだと自問する。聞いても聞かなくても穂積さんが神辺さんと付き合ってたのは変えようもない事実。


「やきもちか……?」
「はい」


 何をしてるんだろう。これから二人で甘い時間を過ごそうってときに。これから穂積さんに抱かれるのに。嫌われる……。

 私の両肩に手が置かれた。穂積さんの大きな手。そして横に向かされる。正面には穂積さんの胸。そして抱き寄せられた。額に当たる穂積さんのシャツ。

 多分、初めて……。抱きしめられるのは。キスは何度もしてるのに、こうして身体を寄せられるのは初めて。

 穂積さんの手が背中に回る。


「ごめんなさい……」
「謝らなくていい」
「だって」
「それだけ俺を好きってことだろ?」


 背中に回された手、ぎゅうっと抱き締められて。

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