ウェディングドレスと6月の雨
「お風呂いただきました」
「ああ」


 穂積さんはTシャツにトランクス。髪を拭いていた手を止めて、タオルを首に掛けて手で髪をかきあげて。


「……」
「……」


 沈黙した。否が応でも緊張する。身体の芯からそわそわして、トクトクと自分の脈が鳴るのが聞こえて、何となく怖くて、不安で、私は拳を握ってそんな自分に耐えてた。

 髪を何度もかき上げていた穂積さんはその手を下ろして胡座をかいている膝の上に置いた。そして床を見つめている。


「成瀬」
「はい」
「いいか?」


 私はコクリと頷いた。俯いていた穂積さんは私の肩に手を掛けると穂積さんの方に寄せた。私は穂積さんの右肩にもたれる形になる。視界には自分の膝と握った手、そこに穂積さんの左手が見えた。その手は私の顎を掴む。

 斜め上を向かされて、見上げれば穂積さんの顔。真っ直ぐな視線、瞳……。怖くて、胸がいっぱいで、どうしようなく苦しくて、私は目を閉じる。すぐに触れる唇、触れるキス。顎を摘まんでいた指が私の耳にズレる。大きな手のひら全体で、耳を頬を覆う。

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