ウェディングドレスと6月の雨
返事をしない私を不思議に思ったのか、穂積さんは手を止めて見上げた。目が合う。二重瞼のはっきりした瞳……。
「嫌か?」
「別のスペースといってもカフェだと人目もありますし」
「人目?」
「変な意味じゃなくて、プレゼンの資料ですし、機密性の高い案件なので、その……」
慌てて言い訳した。だって、社内の女の子が穂積さんと会ってたなんて噂が立って、彼女の耳に入ったらと思うと……。不倫といえども恋愛。彼女に申し訳ない。あの白いワンピースを作ったぐらいなのだから。
「かと言ってスペースを借りるのも費用が掛かりますし」
「俺のうちでいいか?」
「……でも……はい」
無料だからと言って穂積さんの部屋に上がり込むのも考えてしまう。襲われるとかの心配じゃなくて、彼女に対して悪い。返事に躊躇する。
「どっちなんだ」
といっても、もう既に穂積さんちには足を踏み入れているのも事実。そんな言い訳がましいことを頭の中で並べる。
「穂積さんさえよければ……ご自宅にお伺いします」
「ああ。家を出るときに連絡して。駅まで迎えにいく」
穂積さんはそう言ってシステム手帳のメモ欄に数字を書き入れて破る。そして私に手渡した。それを受け取る。穂積さんの番号……。