ウェディングドレスと6月の雨
 ここにも彼女は来たんだろうか。通路を歩いて奥の部屋にいく。相変わらずガランとしていて殺風景で。


「そこ、座って」
「はい」


 小さなローテーブル、天板は黒、木製。私はその上に資料を広げた。でも小さな天板、A4の紙を2枚乗せたらそれだけで半分が埋まる。穂積さんは向かい側に胡座をかき、テーブルの縁にタブレット端末を置いた。


「前回の会議の資料がこれです。これに沿ってお話します。2つ置けないから一緒に見ながらでいいですか?」
「ああ。頼む」


 私は資料の一番上から箇条書きにされた議題を読み上げる。その議題について出た質問や質問者の氏名、回答を読む。穂積さんはそれを聞きながらタブレット端末に打ち込んでいく。


「数値、読み上げてくれるか?」
「はい。A製品が42秒、B製品が38秒、うちの新製品が25秒です」
「他社の新製品発売日は?」
「えっと……来秋ですね。同じタイプのは」
「そうか」


 普段はぶっきらぼうな穂積さんも仕事となると緻密で繊細で。


「右サイドにスイッチだよな」
「いえ左で」
「済まない。逆向きで見てるから勘違いした」


 穂積さんはタブレット端末を持って立ち上がった。


「隣、いいか?」
「え?」
「資料が見にくいから」
「はい……とうぞ……」


 クッションの上で静座していた私はズリズリと横に移動した。穂積さんも向かいにあったクッションを拾って私の隣に置き、正座する。

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