ウェディングドレスと6月の雨

 私は少し驚いた。普通、こういうのって隠したりするのにアッサリと穂積さんは認めた。不倫、社内恋愛。話したがっていたんだろうか。所詮先輩が言うように楽しく軽いものなんだろうか、って。


「正確には不倫してた、だけど。1年前に別れた」


 一年前……。一年前に別れたなら。


「じゃあ、お腹の……」
「……そういうコトだ」


 穂積さんは透明の、ビーカーみたいな形をしたグラスに蛇口で水を満たすと、コーヒーメーカーに注いだ。一年前に別れたならお腹の子どもは穂積さんの子どもじゃない。誤解ということになる。


「だったら言い返せば……お腹の子は穂積さんの子どもじゃないって、旦那さんの……」


 コーヒーメーカーを見ていた穂積さんは顔を上げて私を睨んだ。


「言い返して何になる? 不倫を認めたことになるだろ。だいたい、別れたなんて信じてもらえるか? お腹の子が旦那の子だって信じてもらえるのか??」


 カウンター越しにまくし立てる。あの口数の少ない穂積さんが声を荒げた。少し怖い……。


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