ウェディングドレスと6月の雨
カチャリ。後方のドアが開く。穂積さんだった。時計はもう17時半を回っていて、予定なら会議も終了の時刻。穂積さんは私から資料を受け取ると前方の空席に向かう。穂積さんの指先……少し黒ずんでいた。インクがこびり付いたんだと思う。きっと得意先で機器を見ていたに違いない。髪も肩も濡れている。豪雨の中、走ってきたんじゃないか、って。
まもなく定時、会議は打ち切りになった。広報の高田さんも製品部の社員も、やりきれない表情だった。部長は私に明日の擦り合わせを穂積に、と言って会議室を出て行く。私も手元の資料を片付けて、飲み終えたコーヒーカップを洗おうとトレーを持って集めようとした。
そのとき。
「今日まで遅刻して……。何故お前みたいなのが選ばれるんだよ。やっぱりあの女が絡んでるんだろ?」
高田さんの声。いつもより大きい声だ。帰ろうとした皆が振り返る。
「……」
穂積さんは席に座って黙っていた。手元の資料を見てる。聞こえない筈はない。
「ベッドで喜ばせて釣ったのか? 穂積のテクを教えてもらいたいもんだな」