ウェディングドレスと6月の雨


「……」


 穂積さんはピクリともしなかった。反応しないのは彼女を守るため。ここで応戦したら彼女との関係を認めることになる。彼女のお腹の中にいる子どもも。それが分かるからこそ、私の胸も痛みだした。

 全く反応しない穂積さんに高田さんは更に苛立ちを見せた。高田さんはテーブルを両手の平で強く叩いた。


「ははあ。それとも腹の子をネタに脅したのか?」


 それまで黙っていた穂積さんが立ち上がった。テーブルを回り込み、高田さんの目の前に駆け寄る。そして彼の胸ぐらを掴んだ。室内に緊張が走る。


「おお、面白い。穂積やる気か?」
「高田」
「殴りたきゃ殴れよ。どうせ神辺に庇ってもらえるんだろう? 赤ん坊の子種は俺だって、旦那にばらすぞってか??」
「貴様……!」


 穂積さんの右手が上がる。平ではない、拳。他の社員も慌てて駆け寄る。


「穂積さんっ、やめて! 今はプレゼンに集中しないと……」


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