ウェディングドレスと6月の雨

 強い日差し、正午。梅雨の晴れ間は残酷。流れる汗、公園の蝉の声、雑踏……。私は穂積さんが好きだ。もう、認めない訳にはいかない。隣を歩くだけで胸が痛い。声を聞くだけで耳が熱くなる。好き。でも穂積の中には別の人が住んでいる。片思いの決定してる惨めな恋なのに、気持ちは止まらないって初めて知った。


「お疲れ様」
「穂積さんも」
「あとは反省会議だな」
「はい……」


 来週の会議で今日の報告をしたら、穂積さんとは接点が無くなる。それでいい、視界にいない方がきっと早く忘れられる。

 会社についてエレベーターに乗る。穂積さんとは総務課のある3階で別れた。営業部は5階。パソコンを受け取る。指が触れる。熱くなる指先……。ありがとう、と言おうとしてエレベーターのドアは閉まる。

 私が総務課に帰ると皆が一斉に私を見た。そして口々に、お疲れ様、大変だったね、と労いの言葉を掛けてくれる。私は無事に終わったこと、先方の感触も良かったことを伝えた。納期まで尋ねられたと言うと課内はどよめいた。もう本決まりだね、って。拍手が沸き起こって私は頭を下げる。そして皆は一斉に散れた。

 先輩に肩を叩かれた。


「成瀬さん、どうしたの?」
「え?」
「浮かない顔してる」

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