ウェディングドレスと6月の雨
ひとしきり泣いたあと、手元のワンピースを見ると涙のシミが出来ていた。しかもファンデーションやマスカラが混じって物の見事なまだらを描いている。このワンピース、どうしたらいいだろう。返すにしても返さないにしても、もう一度クリーニングに掛けた方がいい。壁の時計に目をやる……19時50分、まだクリーニング店は開いている。閉店までギリギリ。私は洗面台で崩れた化粧を落とし、すっぴんでアパートを飛び出した。
アーケード街の道を走ると既に下ろされたシャッターに自分の足音が響いた。クリーニング店に着くと店主のおじさんはシャッターを下ろしているところだった。駆けてきた足音に気付いた店主は手を止めて、いらっしゃい、と笑った。そして私が抱えていたワンピースを受け取る。これは大分派手にやったね、嬉し泣きかい、とからかうように言いながら店の中に入っていく。
嬉し泣きなんかじゃない。でも事情を知らない店主のおじさんからしたら、私はワンピースを誂えた幸せな花嫁なんだろう。これを着てパーティーを開いて、祝福されて、嬉しくて泣いたって。
「また着る予定はあるのかい?」
「いえ……」
「知り合いのところでドレスをリサイズしてミニチュアみたいにしてくれるところがあるけれど、どうだい?」
「ミニチュア?」
「ミニトルソーに着せて部屋に飾るんだよ。後はベビードレスにリメイクとか。だって思い出としてとっておきたいだろう? 忘れないように」
「そういうサービスもあるんですね」
クリーニングは明後日には仕上がるから、と言われて店を出る。私は店主のおじさんの言葉が気になっていた。
アーケード街の道を走ると既に下ろされたシャッターに自分の足音が響いた。クリーニング店に着くと店主のおじさんはシャッターを下ろしているところだった。駆けてきた足音に気付いた店主は手を止めて、いらっしゃい、と笑った。そして私が抱えていたワンピースを受け取る。これは大分派手にやったね、嬉し泣きかい、とからかうように言いながら店の中に入っていく。
嬉し泣きなんかじゃない。でも事情を知らない店主のおじさんからしたら、私はワンピースを誂えた幸せな花嫁なんだろう。これを着てパーティーを開いて、祝福されて、嬉しくて泣いたって。
「また着る予定はあるのかい?」
「いえ……」
「知り合いのところでドレスをリサイズしてミニチュアみたいにしてくれるところがあるけれど、どうだい?」
「ミニチュア?」
「ミニトルソーに着せて部屋に飾るんだよ。後はベビードレスにリメイクとか。だって思い出としてとっておきたいだろう? 忘れないように」
「そういうサービスもあるんですね」
クリーニングは明後日には仕上がるから、と言われて店を出る。私は店主のおじさんの言葉が気になっていた。