ウェディングドレスと6月の雨
 私は残った会議の資料をまとめて、皆が飲み終えたコーヒーカップをトレーに集める。きっと穂積さんは来ないだろう。給湯室に向かう。カップを洗う。


「おい」


 背後から声を掛けられた。低い声……振り返ると浮かない顔をしていた穂積さんが立っていた。


「はい。お疲れ様でした」
「ああ」
「穂積さんは行かれますか、打ち上げ」


 穂積さんは首を横に振る。


「これから得意先のところに行く。コピー機の調子が良くないから見てくれって」
「こんな時間からですか?」
「日中はコピー機を使うから、皆が帰ってからにしてくれって。俺もこの時間じゃないと空いてなかったしな」


 一番の立役者。なのに打ち上げに参加出来ないなんて。


「そうですか……」


 何となく予想はしていたけど、寂しくて私は残念に思った。


「アンタはちゃんと飲んでこいよ」
「でも」
「美味いワインにありつけるぞ。俺の分まで飲んできて」


 穂積さんはそう言ってにこりと笑うと右手をゆっくり上げた。その手は私の頭の上に向かう。

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