ウェディングドレスと6月の雨

 エレベーターの上昇が停まると、扉は開いた。暗いエレベーターホール、その正面には重厚感のある木製の扉、その扉には英字筆記体で店名らしきものが書かれていた。Bar TRINITY。営業時間は17時から0時。私は腕時計を見た。16時20分。


「あの……」
「ああ」


 穂積さんは躊躇することなく、その重々しい扉を開けた。キイ、と軋む音とともに隙間から光が差し込んでくる。その光の帯は徐々に大きく広がり、すぐに私の視界は真っ白になった。眩しい……。一度つむった瞼をゆっくりと開ける。


「……あ」


 目が慣れて瞳に飛び込んできたのは水色の空。白い入道雲。そして遠くに見えるインディゴブルーの山々。その手前にはうっすらと光る湖……。僅か8階、でも大きな窓いっぱいに雄大な景色が広がる。7月。爽やかな夏の色、夏の輝き。麦わら帽子を被りたくなる気分。いらしゃいませ、という声で私は我に返った。カウンターの向こうで店主らしき男性がグラスを拭きながら穂積さんと話している。その様子はどうやら穂積さんは常連さんのようで。挨拶を終えた穂積さんは私を窓側の席に案内した。

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