ウェディングドレスと6月の雨

「そうだ。しかも直接浮気の本人から浮気の最中に電話もらった、ってこと」
「酷い……」
「そのときは初対面だったし、3つも年下の新入社員に話したりしなかったけどな。新入社員と人事部って研修後も割と接点あるだろ、契約書とか住所申請とか。人事部カウンターに行く度に顔が見えて気になって。メシに誘って話を聞いてるうちに……そんなとこだ」


 穂積さんはグラスに残っていた黒ビールを飲み干し、カウンターにいたマスターにお代わりを追加した。そのマスターと私は目が合い、私もお代わりをお任せでお願いした。稜線に掛かっていた太陽は完全に山の向こうに隠れて、空だけが薄明るい。外が暗くなった分、既についていた店内の照明が明るさを増していく。

 2杯目のカクテルはココナッツミルクのお酒をミルクで割った濃厚な味。振りかけられたシナモンパウダーがアクセント。甘くて美味しい。でもそんなカクテルの味とは裏腹に、私の気持ちは沈んでいく。想像以上に2人の関係は深かったから。ただ体だけの関係ではなく、心の底から繋がっていたんだと知って、打ちのめされてる自分。最初で最後のデート……来るべきじゃなかったのかもしれない。

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