ウェディングドレスと6月の雨
 そうこうして週末。何の妙案も無いまま、穂積さんと待ち合わせた場所に出向いた。穂積さんの住むマンションの最寄り駅。煌々と照りつける太陽、暑く眩しい。どこも思い付かなかったと正直に打ち明けて、映画にでも誘おう……。

 肩を叩かれた。


「おう」


 横を見れば穂積さん。


「浮かない顔して……。大丈夫か? 具合が悪いのか?」
「いえ。あの、思い付かなくて」
「何が」
「穂積さんを案内出来る場所とか」
「いや。アンタの行きたいところでいいんだ。俺を喜ばせようとか、考えなくていい」
「でも」
「“忘れるまでそばにいる”……。これが契約条件だろう?」


 そう言って穂積さんは笑った。


「そうでしたね」


 私は肩の力が抜けた。そう言われて気合いを入れすぎてた自分に気がついた。


「見たい映画はあるか?」
「いえ、特には」
「行きたいショッピングモールとかは」
「そうですね……」
「じゃあ」


 穂積さんは私の頭から順に下へと見下ろした。小さな麦わら帽子、マキシ丈のワンピース、サンダル。


「海、行くか?」


 海……? まさか海水浴とか? 瞬時にして自分の持ち物を確認する。


「海ですか? え、でも水着もタオルも日焼け止めも持ってないから」
「無理に泳ぐこともないだろ?」
「そ、そうですね……」

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