ウェディングドレスと6月の雨
 私と穂積さんを目撃したのは広報室の社員らしい。私は顔が熱くなっていく。さっき噂されてたのはそっち……?


「ふうん。そうなんだ」
「そうじゃないです」
「じゃあ、何なの。その顔」
「元来こういう顔です」


 先輩はクスクスと笑った。


 昼休み、一緒にコンビニに行こう!と誘う先輩を振り切り、ビルに隣接する駐車場に向かう。穂積さんは社用車の運転席にいた。私を見つけると手を挙げる。私は駆け寄って助手席に乗り込んだ。


「お待たせしました」
「さあ、行こう」


 サイドブレーキを外すと車は動き出す。社用車のカーステレオはラジオだけ。しかも拾える電波はAMのみ、スピーカーからは少し下ネタを含んだトークが繰り広げられていた。穂積さんは時折、鼻を鳴らして笑う。ケーキ屋さんにはすぐについて駐車場に車を止める。口笛を吹きながら穂積さんは運転席を降りた。店の中は女の子でごった返していたけど、予約をしていた穂積さんと私はすぐに中に通された。


「何にする」
「パスタランチ」
「俺はドリアランチ」
「暑いのに熱いもの?」
「こういう暑い日こそ、汗をかいて飯を食うんだよ」


 穂積さんはニコニコしながら手を挙げて店員さんを呼ぶ。そして愛想よく注文をしてさっきのラジオトークの話をした。髪に白髪があったら髪を染めるけど、あっちはどうするんだろうな、とか。私は少し違和感を覚えた。穂積さんらしくないって。

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