ウェディングドレスと6月の雨
再び穂積さんは髪をかき上げた。
「なんでだろうな、自分から別れを切り出して突き放した癖に。彼女が幸せになることが自分の幸せじゃないなんてな」
穂積さんの言いたいことは私にも痛いほど分かる。だって私だって同じ位置にいる。穂積さんの幸せを考えたら、私は穂積さんのとなりにはいられないのだから。
「小さいよな、俺」
「そんなことない」
「そうか?」
「誰だって……きっとそうだと思います」
ラジオからCMの流れる音がして穂積さんは腕時計を見た。午後の始業5分前。穂積さんは慌ててサイドブレーキを下ろして車を発進させた。会社の通用口の前で降ろしてもらう。
「無事、生まれることを祈ってます」
「ああ。ありがとう。ありがとうってのも変か」
「生まれたって情報が入ったらメールください」
「分かった」
手を振る穂積さんの顔は少し和らいでいたように見えた。