ウェディングドレスと6月の雨
 腕時計を覗くと21時半、そろそろ3時間だ。最初は明るくプロ野球の話をしていた穂積さんも口が重くなってきた。


「気分、悪いですか?」
「いや。まだ飲める」
「じゃあそろそろ場所を変えませんか」
「ああ。任せる」


 レジに行こうと穂積さんは伝票を持って席を立ったが、立ち上がった瞬間よろけて膝を付いた。私は慌てて穂積さんに寄り、肘をすくい上げて立たせた。


「……大丈夫だ」


 穂積さんは私の腕を振り払い、覚束ない足取りでレジに行くと財布からお札を取り出すと会計をした。千鳥足。もう限界だと思う。そろそろマンションに帰した方がいい。

 焼鳥屋さんの暖簾をくぐり、外に出る。


「穂積さんちに行きませんか?」
「俺んち?」
「家飲みってやつです」
「ああ」


 少し遠回りしてコンビニに行き、つまみやアルコールを買い求めた。穂積さんはまだ飲む気なのか度数の強いウォッカやウィスキーをカゴに入れた。炭酸、ミネラルウォーター、氷。乾きもの、チーズ。それから穂積さんの部屋に向かった。穂積さんは無言だった。

 マンション、エントランスは煌々と灯りを灯している。静まり返ったそこでエレベーターに乗り込む。

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