ウェディングドレスと6月の雨
 部屋に入って穂積さんはテーブルの前にドスンと腰掛けた。ネクタイを緩めて上着を床に放る。私はキッチンに入り、カウンター越しに穂積さんの様子を見た。胡座を組むように膝を曲げてじっとしていた。あまり飲ませたくはないけど、酔い醒ましに冷水を用意しようとした。


「グラス、借りますね」
「……」


 穂積さんからの返事はなかったけど、食器棚の扉に手をかけた。ゴン……部屋から鈍い音がして、私は振り返った。


「穂……?」


 テーブルに両肘を突き、両手で顔を覆っている。背中を丸めて、肩を震わせて。いつもは威圧感のある大きな背中が小さく見えた。


「……っ」


 しゃくりあげるような声、鼻を啜る音。私は手にしていたグラスを棚に戻して穂積さんのそばに駆け寄った。


「泣き上戸ですか?」
「……っ、く……」


 横に並んで穂積さんの肩に手を掛けた。小刻みに揺れている。私はその手で背中を撫でるようにゆっくりと上下させた。徐々に大きくなる震え、啜る声。それは嗚咽に変わっていく。


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