ウェディングドレスと6月の雨
 泣いていた。何も言葉を発せず、ただ、しゃくりあげて。私も何も言わずにそばにいた。邪魔かもしれないと躊躇したけれど、穂積さんは私の手を振り払うことなく、泣いている。

 どれくらいしただろう。穂積さんの震えが治まる。声も静かになる。顔をのぞき込もうと私が屈んだ瞬間、穂積さんの体がゆらりとした。

 ドタン。穂積さんは私の反対側に倒れた。


「穂積さ……?」
「……」
「穂積さんっ」


 何事かと私は彼の肩を大きく揺すった。急性アルコール中毒? まさか。


「穂積さ……?」
「……」


 しゃくりあげる声に変わって聞こえてきたのは……寝息。


「寝ちゃった……?」


 どうやら穂積さんは眠ってしまったらしい。私は突然のことにびっくりしたけれど、倒れた衝撃にもピクリともしない大きな体に何だか可笑しくなった。規則的に聞こえる寝息、それに合わせて動く肩。目尻に残る涙を指でそっと拭った。私はベッドからタオルケットを引っ張り、穂積さんに掛けた。

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