甘い公約
…☆…

私は中庭の像の前に立っていた。
‘ガブリエーレ・ダンヌンチィオ’

彼の名だ。

イタリアの詩人。小説家、劇作家。

頽廃的な官能美を特徴とし、数多くの作品を残した。昨日の授業でも、彼の作品が登場した…。
「昨日は『死の勝利』だったっけ?」
「えぇ。名作中の名作でございますね」
「だけど彼の小説群の題名だけは気にくわないわ。ゆりとばらは許せるけど、ざくろはさすがにないわ。しかも全てロマンスがつくなんて」
「…」
「どうかした?」
「御言葉ですが、今ダンヌンツィオはどのようなお気持ちでしょうか」
「…言い過ぎたわ、ごめんなさい」
記念碑に頭を下げると、愛想笑いをしてその場を去った。







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