私がお嬢様をやめる時
キッカケ
目を開けると、目に入ったのは
見慣れた自分の部屋の天井だった。

私、どうしたんだっけ?
あぁそっか。お酒飲んでこの間みたいに
フラフラになっちゃったんだ…

あれ?でもなんで私、家にいるの?


「お目覚めですか?」


丁度部屋に入って来たのは
水嶋だった。


「水嶋、私どうやってここに…」


ゆっくり起き上がると
水嶋は冷たい水が注がれたコップを
私に手渡した。


「わたくしがお連れしました。」


確かあの時抱きかかえてくれたのは
水嶋だった。
でも何で水嶋がいたんだろう…


「お嬢様から
わたくしの携帯に着信がありましたが
すぐに切れてしまいましたので
念のためお迎えにあがりました。」


そっか、あの時すぐに
キャンセルしたつもりだったけど
着信履歴が残ったんだ。
そういえば
初めてお酒でフラフラになった時も
清美がすぐに水嶋を呼んでくれて
水嶋がああやって私のこと
抱きかかえてくれたな…


「ありがとね。」


水嶋にお礼を言うのは
ちょっと照れ臭い。


「いえ。主のために
尽くすのが執事の役目ですので。

ですがお嬢様…」

水嶋は一度眼鏡をクイッと上げると
冷たい目がさらに冷たくなって


「ご自身がお酒に弱いことは
おわかりのはず。
あのような状況は
大変よろしくありません。
あのままあの男に連れて行かれていたら
何をされていたかわかりません。」

私を一喝した。


わかってるわよそんなの。
だけどあの人爽やかだったし
悪い男には見えなかったし。
私だって
オシャレなバーでお酒だって飲みたい。
珍しくお礼を言ったのに
なんで怒られなきゃなんないのよ。

またそうやって
素直じゃない自分が頭の中で
言い訳してる。
つくづくそんな自分が嫌になる。
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