おにぎり屋本舗 うらら
狭いオフィスの奥の応接スペースに通された。
皮張りのソファーに腰を下ろし、小泉は必要な情報を無駄なく聞き取って行く。
セミナー参加者の名簿も見せて貰った。
PC管理されている参加者一覧表の中から、すぐに高須文也を見つけ出す。
高須は過去30回もの自己啓発セミナーに参加していた。
初参加は二年前、常連の彼を、事務の女性も記憶していた。
高須について詳しく聞き出そうとしていると、小泉の携帯電話が鳴り出した。
「失礼」と断り、小泉は立ち上がる。
少し離れた位置で、電話に出た。
それは本庁に置いてきた、SMRの部下からの物だった。
「小泉室長、すすきの飲食店連続放火事件の容疑者を、捜査一課が捕まえました。
容疑者は村坂俊則38歳、会社員。
私が見る限り、引っ掛かる点が多数あり、誤認逮捕の可能性があります。
どうしますか?」
小泉は「すぐ戻る」と言って通話を切った。
小泉が抱えている事件は、黒飴覚醒剤事件だけではない。
地下鉄痴漢事件、ひき逃げ、女子大生絞殺事件…
誤認逮捕の可能性が少しでもあれば、SMRは動き出す。