幸せの花が咲く町で




やがて、瞬く間に数日が過ぎ、水曜日がやって来た。
小太郎を迎えに行って家に戻ると、玄関先に花を抱えた篠宮さんの姿があった。



「あ、堤さん、小太郎ちゃん!」

「おばちゃーん!」

僕は会釈し、小太郎は大きく手を振った。



まさか忘れてはいないだろうが、何時ごろ来るのかとか、花はどうすれば良いのかとか何も聞いていなくて、前日、小太郎のお迎えの時に聞こうと思ったら、たまたまタイミングが悪かったのか、篠宮さんはお店にはいなかった。



「こんにちは、篠宮さん。
今日はお世話になります。」

「こちらこそ……」



家の中に入ると、篠宮さんはかいがいしく小太郎の世話をしてくれた。
その好意に甘えて、その間に僕はおやつの用意をする。
昨夜のうちに作っておいたオレンジの寒天ゼリーを生クリームとフルーツで飾り立てるだけだ。



「良かったら、篠宮さんもどうぞ。」

「ありがとうございます。
まぁ、綺麗なゼリー……」

篠宮さんは、そう言いながら目を細めた。



二人が食べ終わったら、ようやくお花の初授業が始まる。
自分の家だから、それほど緊張することはないけれど、それでも、やはりわくわくする気持ちを感じた。
そんな気持ちを押さえながら待っていると、篠宮さんと小太郎は、にこにこしながらゼリーを全部食べ終えた。
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