幸せの花が咲く町で




『パパは優しくてなんでも出来る素晴らしい人よ!』


さっきの篠宮さんの言葉が、頭の中で繰り返された。



(……僕のことをかばってくれた……しかも、あんなに真剣に……)



僕があまりにも哀れに見えたんだろうか?
だから、篠宮さんはあんなことを……
それとも……



「あ、小太郎……」

「何?」

「この人がおねぇだ。
ほら、ちょっと女っぽいだろ?
女っぽい男の人のことをおねぇっていうんだ。」

僕はたまたまテレビに出ていたおねぇタレントを指差した。



「パパは全然女っぽくないよ。
なのに、なんで、翔君はあんなこと言ったんだろう?」

「パパは家でお掃除をしたり、お料理したり、お花を活けたり……ほら、普通は女の人がするようなことをやってるだろ?
だから、きっとそう思ったんだよ。」

「そっか~…
……あ、じゃあ、ママもおにぃと間違えられるかもしれないね。」

「え?」

「ママはお仕事に行ってるし、お家のことやらないから、翔君はママをおにぃだと思うかもしれないよ。」

「……そうかもしれないな。」

僕は笑いを噛み殺しながら、そう答えた。
子供は時々面白いことを言う。
当の本人は、そんなことには少しも気付かずに、テレビに見入っていた。



それにしても、篠宮さんはなぜあんなに熱く、小太郎に僕のことを話してくれたんだろう?
まさか、本気でそう思ってくれているなんてことはないと思うけど……



でも……嬉しかった。



少なくとも篠宮さんは僕のことを否定はしていない。
そう思えただけでも、心の中が少し明るくなったような気がした。
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