幸せの花が咲く町で
＊



「おばちゃん、こんにちは！」

「小太郎ちゃん……」

小太郎ちゃんの顔を見たら、昨夜の夏美さんと男性のことが頭を過った。
こんな可愛い子供がいるのに、夏美さんはなぜあんな人と……



「篠宮さん、こんにちは。
今日も暑いですね。」

「こ、こんにちは。」

私は思わず堤さんの視線を逸らしてしまった。
母を通院させてるなんて嘘を吐き、その上こそこそと夏美さんの行動を調べて……それだけでも後ろめたい気持ちが重かったのに、昨夜は夏美さんとあの男性が一緒のところをしっかりと見てしまったから……
辛すぎて、堤さんの顔を見られなかった。



「……小太郎、行こうか。」

「おばちゃん、お母さんの病気治った？」

「う、うん…まだ良くならないの。」

「そう…早く良くなると良いね。
治ったらまた遊びに来てね。」

「あ、ありがとう…！」



小太郎ちゃんはなんて良い子なんだろう。
そう思うと、夏美さんのことがとても腹立たしく、そして憎らしく思えた。
こんなに可愛い小太郎ちゃんと、こんなに素敵な堤さん……夏美さんはそんな宝物を持ってるくせに、その上、他の男性に心を寄せるなんて……



私にはとても信じられないことだ。



堤さんと小太郎ちゃんの後ろ姿を見ていたら、なんだかたまらない気持ちになった。
二人は、裏切られてることを少しも気付いていないのだから。




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