幸せの花が咲く町で




「あんたは経理的な事務作業から始めたらどう?
そういうことは、苦手じゃないよね?」

「……まぁね。
でも、本当に良いの?
亮介さん、店の名義を僕に変更するって言ってたよ。」

「良いに決まってるじゃん。
最初からそうするつもりだったんだ。
ただ、そうなると、山野さんにバレるから、一旦、亮介にしただけなんだから。」

「僕、商売はやったことないし、どれだけ返済できるかわからないよ。」

「返さなくて良いんだよ。
ずっと、私や小太郎の世話をして守ってくれたお礼なんだから。」

「またそんなことを……」

このあたりは、桃田程ではないにしろそこそこ便利な場所だし、あの店が安いものじゃないってことは十分わかっている。
それをくれるなんて……本当にめちゃくちゃだ。



「それで改装のことなんだけど、適当に決めても良い?
それとも、何か具体的にこうしたいっていうのはある?」

「……なっちゃんに任せるよ。」

「隣の空き店舗も買ったんだ。
で、その一部をガレージにして、残りをちょっとしたサロンじゃないけど、ほら、予約とか受ける時とかもゆっくり書ける場所がないじゃん。
花束作る間とか、とにかくお客様にゆっくりしてもらう場所があると良いんじゃないかなって思ってね。」

「ちょっと……隣の店舗もって……
お金は大丈夫なの?
亮介さん…そんなにお金持ってんの?」

「うん。あいつ、いろいろと事業やってるから、全然平気。
本当に生意気だよね。
出会った頃は私の部下だったのに、いつの間にかどんどん偉くなって……
そのせいで、うまくいかなくなったんだよ。
金の心配はないんだから、私には働かず家事をしてくれなんて言い出して……
家だって、私に相談せずに勝手に買ったし、ムカつくったらないよ。」

「亮介さん、そんなに稼いでるんだ……」

確かに身なりや車からしても、亮介さんはお金には困ってなさそうだけど……
どうやら僕が思っているよりもずっと稼いでいるようだ。
そういう状況なら、なっちゃんや小太郎の心配はないけれど、それに引き換え僕は……そう思うと、同じ男としてとても情けない気分になった。
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