エンビィ 【完】
だってお客は……
みんな2台のピアノを囲むようにしているのだ。
そして拍手。
それは、ピアニストが登場したから発生しただろうもの。
なのに、肝心のピアニストはあたしの隣にいて。
尚且つ口笛を吹いて、
まるで演奏が始まるのを楽しみにしているように見えるのだ。
「アレ。テンサイ、ピアニスト。ワタクシの、愛するパートナー」
観客の合間をぬって、
「カッコイイ、デショウ?デモ、ダメッ!」
ピアノへと進む男は。
「アレ、ワタクシのパートナー、ダシ」
――――不機嫌そうだ。
「デモ、ソノマエに、カレハ、イブのモノ」
不機嫌で有りながら。
「イブ、シッテル?」
その瞳は先ほどと同様、
「エデンの園の、イヴ、ジャナイヨ?」
ただ一人しか映ってないかのよう。
「……もうはじまるんでしょ」
そうしている間にも、
ピアニストとピアノの距離は埋まっていく。