エンビィ 【完】




「マチガッテタ?」


「ああ」


「ケレドモ、ジジツムコン、デモ、ナイネ?」


「ああ」



近づいてくる声に、視線は自然とあがる。

黒真珠の瞳は、アイリーンに向けられている。

百瀬の喉につきつけられた松葉杖の先を、伊織は自らの手のひらに当て、下げさせた。




「イオリ」



下げさせられた松葉杖に興味を失ったのか。


それを床に投げ捨てたアイリーンは、

少し不貞腐れたように、




「“ソレ”オモカッタヨ。“コレ”もミガルとはイエナイネ。ナニヨリ、パートナーニ、ウソ、ツイチャッタヨ」



でも、と続け。



「ガマン、シタダケノタイカハアッタネ。――――キョウハ、ワタシクノ、パートナー、ユズッテアゲテ、ヨカッタ」



好奇心に満ちた、

生き生きと活力のある顔で、信じられない言葉を吐いた。




< 115 / 195 >

この作品をシェア

pagetop