エンビィ 【完】
「マチガッテタ?」
「ああ」
「ケレドモ、ジジツムコン、デモ、ナイネ?」
「ああ」
近づいてくる声に、視線は自然とあがる。
黒真珠の瞳は、アイリーンに向けられている。
百瀬の喉につきつけられた松葉杖の先を、伊織は自らの手のひらに当て、下げさせた。
「イオリ」
下げさせられた松葉杖に興味を失ったのか。
それを床に投げ捨てたアイリーンは、
少し不貞腐れたように、
「“ソレ”オモカッタヨ。“コレ”もミガルとはイエナイネ。ナニヨリ、パートナーニ、ウソ、ツイチャッタヨ」
でも、と続け。
「ガマン、シタダケノタイカハアッタネ。――――キョウハ、ワタシクノ、パートナー、ユズッテアゲテ、ヨカッタ」
好奇心に満ちた、
生き生きと活力のある顔で、信じられない言葉を吐いた。