エンビィ 【完】
“キョウハ、ワタシクノ、パートナー、ユズッテアゲテ、ヨカッタ”
アイリーンは。そう言った。
“今日は、ワタクシのパートナー、譲ってあげて、よかった”
確かに、そう言ったのだ。
あたしは血の気が引いていくのを感じながら、伊織を見据える。
「感謝している」
低い美声でそういった伊織は、ぞっとするほど凄艶に笑った。
――――あれは…アイリーンのあれは。
どこの、フェアリーテール?
いや誰のフェアリーテール?
違う…違う、わ。
混乱しているあたしは、本当はわかっている。
多少の脚色があったにせよ、
あれは事実無根ではないと――――断言していたのだから。
「………伊織様……」
蚊の鳴くような、小さな声で呼ぶ。