エンビィ 【完】
「あたしに……あたしに…格の違いを見せつける……そのために、こんな手の込んだことを…?」
「格の違い?」
「と、とぼけないでよっ…!あたしと…っ……あたしと、ユキノがそんなに価値が違うと見せつけたかったんでしょ!?」
「君のことは、二の次だ」
「……に、二の次?」
「知っていると思うが、“アレ”は、この世で唯一人のためにしかピアノを弾かない」
「……」
「金では勿論だが、俺が請うても、頑としてその約束は破らないらしい」
その無表情に自嘲も苦笑もない。
ただ淡々と、事実を述べている。