エンビィ 【完】




「だから、君のことは二の次だ」



つまり……

あたしのプライドを粉砕させるのは、ついででしかない、と。

ただ単に。



“金では絶対に買えないし、どんなに請うても与えてはくれない”ユキノのピアノの音を聴いてみたかったと。



屈辱とも違う

―――――この感覚はなんなのか。




伊織は……どこまでも溺愛するユキノしか見ていなくて、そして、どこまでもユキノ以外には残酷だ。

決して鬼のように、悪魔のように、非情というわけではないのに―――――どこか、どこか無慈悲なのだ。



きっとあたしがどんなに足掻こうとも、

伊織にとっては蚊を追い払うように、赤子の手をひねるように、簡単で、少し煩わしく感じる程度なのだろう。





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