エンビィ 【完】
「玲奈様」
「………」
「玲奈様」
「………」
「れなさ―――」
「……聞こえてるわ」
放心するように、床に崩れ落ちたあたしを抱き留めた百瀬は、そのあと伊織と何か話していた気もする。
伊織の声は、ずっと聴いていたいほど魅力的だけど
――――あの男の言葉は、毒だ。
いまも体中に、毒を回し続けている。
「百瀬」
「はい」
「百瀬の言ったこと、半分当たってたけど、半分は間違ってたわよ」
高いヒールを脱ぎ捨てて、素足で宙を蹴る。
ぶらぶらと揺れる足は、振り子のようだ。