エンビィ 【完】
「好きなドレスを着たらいい」
破けたドレスを気にしつつも、伊織の後を追って入った部屋には、大量のクローゼット。
それを3つほど開けた伊織は、嫌そうに目を細め、
部屋を出ていこうとする。
「ま、まって!」
いまこの状態で、こんな最上階に一人ぼっちになるのは、心細かった。
なんだ、と言いだけな表情が振り返る。
「これって…全部、ユキノさんの…?」
まだ開かれていないクローゼットに、
どれほどのドレスが仕舞われているのか確かめるために、順番に開けていく。
このホテルを家にしているわけでもないだろうに、
何千着と有りそうなドレス。
「ああ……貢物が殆どだろうがな」
先ほどの嫌そうな顔に加え、苦くそう言った。