ガラスの靴じゃないけれど
「もうとっくに解散したよ。松本チーフは若葉のことを待っていたみたいだけど、部長に掴まって二次会に強制連行」
「望月さんは二次会に行かなくていいんですか?」
通路を進んでいた望月さんは足を止めると、大きなため息を付いた。
「こんなに酔った若葉をほったらかしにして、二次会に行けるわけないだろ?ほら。帰るよ」
二次会ではなく、溝口さんでもなく。望月さんが酔ってしまった私を選んでくれたことが何よりも嬉しい。
酔いに任せて望月さんに身体を寄せれば、心がホッと落ち着いた。
「ったく。チーフの野郎。若葉がこんなになるまで飲ませるなんて、下心がバレバレなんだよ」
「え?何れすか?」
「いや。何でもない。それより若葉。外にタクシーを待たせているから急ごうか」
「はぁい」
私を支えってくれる望月さんの力強さに心をときめかせながら、少しだけ酔うのも悪くないかもと密かに思うのだった。