ガラスの靴じゃないけれど


突き出たお腹をさすりながら言われた部長の言葉は、褒め言葉なのか、そうでないのか、よくわからない。

「まあ、期間限定らしいからサクッと手伝ってきなさい。頼んだよ」----

こういった経緯で開発事業部に異動してから二か月経った六月上旬の今。私はコピーを含む雑用に追われている。というわけ。

コピーを取りながらチラリと見つめるのは、開発事業部のフロアの中央を陣取っている精巧な作りの建築模型。

地上20階建てのビルは、太陽光をふんだんに取り込めるようにガラス張り構造。

10階までのフロアにはアパレルショップやレストラン、映画館等が出店予定。

11階以上の高層階はオフィスフロアとなる予定だ。

ビルの眼下に広がるのは、都会のオアシス的な存在になる噴水広場。

通路の脇に植えられているのは、配列が美しい緑の街路樹。

この複合商業施設が建築される予定地なのが、昨日、自主的に視察をした光が丘駅北口商店街。


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