お金より体力が大事?
多佳子にそういわれて、少し考え込むように小花は続きを話した。


「お兄さんの従弟にあたる人たちが、私に群がってきたときがあって・・・お酒に酔ったせいもあったのか、私の体にさわってきたんです。

それはお兄さんだってわかっていたはずなのに、何も注意してくれなくて・・・。
それを姉に言いつけたら、私がはっきりした態度をとらないからだって言われて・・・。」


「まぁ・・・それはひどい。
お姉さまもほんとはわかってたのかもしれないわね。」



「そうかもしれません。だから私がそのあとでベストセラーを出したときだって、お金とか何も要求されることはありませんでした。

でも、電話以外は疎遠です。」



「うちはもう両親はいないから、姉弟だけなんだけど・・・まぁまぁ普通に思い出話はできているわ。
幸鷹はあのとおり優しいしね。

オリンピックに出られなくなったときと、父の会社がどうにもいかなかったときだけはかなり凹んでいたけれど、あなたに出会ってからの幸鷹は選手のときと同じ笑顔が出てきてほんとにうれしかった。

まさかこんなに若い彼女さんだとは思わなかったけれど・・・。
でも、それで納得した部分もあるわ。

好きなことを愛しているのか、尊敬しているのか、憧れているのかわからない時期なのよね。
大人の男を相手にしてどうしていいのかわからないわよね。」


「は、はい・・・。私の方こそ、憧れの人にいっしょにいてもらってうれしい反面、どうしたらいいのかわからないっていうのが・・・ほんとのところで。」



「難しく考えなくてもいいんじゃない?
大人の男っていっても見た目だけなんだから、子どもと大差はないわよ。

あなたはもっと利用して、気に入らなかったら捨ててやっていいんだと思うわ。」


「す、捨てるんですかぁ?」



「そうよ。女が捨てられるってお話の中なら多いけど、現実はそうじゃないはずよ。
もっとできる女はやらなきゃいけないこともあるんだし、自分というものは絶対持ってなきゃダメ!」


「はい、もちろん。」



「だけどね、ちょっとだけ身内びいきさせてほしいんだけど、幸鷹があなたを求めたら本気だと受け取ってやってね。
あのこね、見た目もいい方でしょ。
とくにオリンピックを目指してたときはファンも多かったし、恋人になりたいっていってきた女の子も多かったわ。

それで何人かともつきあったりしてたの。
それで何人かに好き勝手されて捨てられて・・・つきあってみるとつまんないヤツなのよ。

境遇の華やかさと違って地味というか古風というか・・・飽きられちゃうのよ。
それで傷ついてね、無理な練習をしたりして体も痛めたわ。」


「もしかして・・・選手でなくなった日も?」


「ええ。ずっと応援しにきてくれてた娘が新しい彼氏と旅行に行っちゃったの。
彼女にとってはミーハー的なものだっただけなのよね。」
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