獅子座流星群
「そ…そうです」
ビックリした。それこそ今日、偶然とはいえ急にお会いした事よりも。
「本当に久し振りだね。会うのは四年ぶりくらいかな」
「覚えて下さってたんですか?」
「そりゃあね。可愛い後輩の名前くらい覚えているさ」
「でも……」
私の時は受賞者が三人もいた。他の二人はそれからもまぁまぁ売り上げを伸ばしてるけど、私の作品だけがその後の売れ行きも鳴かず飛ばず。芦萱先生が小説界のトップクラスにいる人なら、私は下の下。
だからいくら同じ賞出身だからって覚えられていたなんて信じられず不思議な感覚になっていれば、芦萱先生はクスリと微笑を落とした。
「いやね。私は人の顔と名前を覚えるのは得意なんだよ」
「……素敵な特技ですね」
「まぁね。作家なんていうのは人間観察は好きでも、そういうのは苦手な人が多いからね」
確かに、と思い無言で頷いた。
「でも高橋さんは咄嗟に思い出せなかったよ。髪型変えたよね?」
当たりだ。芦萱先生と初めてお会いした時は黒髪のロングストレートヘアだったのをほんのりブラウンに染め、長さも鎖骨くらいで巻いている。
最近美容院に行ったのだ。カットとヘアカラーとデジタルパーマで、一万六千円。割り引きのクーポン券を使ったとはいえ、痛い出費だった。