聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~
王位を狙おうなどという気持ちはこれっぽっちも、そんな発想すらカイの頭にはなかった。

ただただリュティアが実の妹、そのことが衝撃的だった。

世界が土台から崩れていくようだった。

カイはそれから、どうやら長い旅をこなすことができたようだった。

気がついたらフローテュリアに帰り着いていたからだ。

その間三度の食事もきちんと食べ、仕事もちゃんとこなしたようだが、すべてうろ覚えだった。

覚えているのはリュティアと顔を合わせた時の胸の痛みだ。そして彼女に対する膨れ上がるような恋しさ…。

カイにはもうわけがわからない。

リュティアは実の妹だという。

ではこの恋しい想いは何なのか。

触れたいと、口づけたいと、できることなら体を重ねたいと、湧き起こってくる欲望はなんだというのか。

こんな想いはおかしいのか。許されないのか。

逢えば苦しいのに、カイはリュティアと過ごす二人きりの時間を諦めることができない。カイの人生でもっとも大切な時間だからだ。リュティアもそんな時間を大切にしてくれていることがわかるからなおさらだ。

だが逢えばやはり苦しい。どうしようもない。

カイの心は完全に、迷路にはまりこんでしまったのだった…。
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