聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~

フローテュリアに帰りつくなりリュティアを待っていたのは、グラヴァウンとフリードと山のような報告と山のような仕事だった。

留守を守ってくれた二人へのリュティアの礼を聞くのもそこそこに、フリードがリュティアの私室を歩きまわりながら苦い顔で報告を始めた。

「状況は思わしくありません。端的に申し上げれば、我が国は今現在まっぷたつに分裂しています。朝議でさえも。まるで子供の喧嘩のような様相を呈しています。なぜだかわかりますね?」

「お兄様のことですね…どうしましょう」

「どうしましょう、ではございません。しっかりなさってください。我々の認めたたったひとりの女王陛下が、腑抜けた人形のようでは困ります」

「え……?」

リュティアは耳を疑い二人を交互にみつめた。まさかとは思うが、リュティアはおずおずと尋ねてみる。

「まさか…お二人はお兄様より私を推してくださるのですか…?」

グラヴァウンとフリードの二人は一度顔を見合わせると、二人同時にリュティアに向き直って大きくひとつ頷いて見せた。

リュティアは信じられない思いでいっぱいで、口に手を当てしばらく言葉が出て来ない。あの何事にも秀でたラミアードより自分を国王に推してくれる人がいたとは驚きだった。

「あ…あの、それは、ありがとうございます…でも、本当にどうしたらよいのでしょうか。何かお知恵を拝借できませんか」

知恵と言えばフリードである。
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