聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~
第七章 真実の王

鈴の音が響き渡る。

高く、低く、さざなみのように徐々に大きく激しくこの神殿の祈りの間に響き渡る。

六人の神官たちが手に持つたくさんの鈴のついた錫杖が激しく上下に振られ揺れる音だ。神官たちは祭壇を囲み、髪を振り乱して鈴を鳴らし、忘我の域に達しつつある。その鈴の音が集まる祭壇の中央で、光射しこむ天窓に跪くのは大巫女の老婆ラタユだった。

彼女が普段口をきくことはない。彼女が口を開くとき、それは神の意志を伝える時だけなのだ。

鈴の音がいよいよ高まる。ラタユの脳髄を鈴の音だけが占めていく。

―そして。

不意にラタユが顔を上げ、かっと瞼を開いた。

「…神託は下された」

しゃがれた重々しい声が、ラタユの口から発せられた。

それを合図に、鈴の音が止んだ。

神官たちはラタユの続く言葉を待って、耳を澄ますのだった。
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