聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~
ライトは一人闇の中を駆けながら、自嘲気味に笑った。

―好き? どうかしている。魔月にそんな感情、あるはずがないではないか。

だがもう一人の自分が叫ぶ。確かに彼女を好きではないかと。

だめだ。許されないのだ。

こんな気持ちは、忘れるのだ。存在してはならないのだ。

射られた腕の痛みが、ライトを我に返らせてくれた。自分は紛れもなく人間の敵なのだと思い出させてくれた。

もう、歯車は止められない。自分はとっくのとうに、道を選んでしまったのだから。

自分たちはもう、戦うしかないのだ。

―愛し合っていても?!

叫ぶような疑問に、静かな声が返る。

―たとえ、愛し合っていたとしても…。
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