聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~

カイが扉から飛び出すと、そこには見たことのない景色が広がっていた。

虹色の雲が渦巻く空の下、ざあっと風が渡る。

一面の草原だ。

やわらかそうな丈の短い緑の草の上に、透明な板のような光の道が縦横無尽に走っており、そのあちこちがぽうっと強い光を放っている。

さきほどの光る階段の空間が、しばらく見ないうちにどうやらこんなふうに姿を変えてしまったようだ。

どの道を通って帰ればいいのか、カイにはさっぱりわからなかった。しかし迷っている時間はなかった。

どの道を通っても生ある者の世界に通じているだろうと判断し、手近な道を選んで駆け出した。

その頭上に巨大な影が差した。

最初カイは全神経を走ることに集中していたのでその影を気にとめなかった。だが続いてばさりと羽音が迫ってきたとき、ついに顔を上げ、そのまま思わず立ち止まって瞠目した。

「やっと見つけましたよ聖乙女(リル・ファーレ)」

虹色の空に現れたのは毒々しいまでに鮮やかな紫の羽根を持つ巨鳥だった。そのすらりとした頭部には禍々しい二本の赤い角を生やしている。

―魔月…それも人語を操る…四魔月将!?
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